「コエンザイムQ10」という名前を聞いたことはありませんか?実は「コエンザイム」とは、日本語で「補酵素」のことです。
補酵素は、酵素が仕事をするために欠かせない「助っ人」です。
そしてその多くは、私たちが毎日の食事から摂っているビタミンから作られています。
この記事では、補酵素の役割とビタミンとの関係、コエンザイムQ10の正体を、やさしく解説します。
3行でわかるこの記事の結論
補酵素とは?酵素の仕事を支える「助っ人」
補酵素とは、酵素と組んで化学反応を進める、小さな分子のことです。英語では「コエンザイム(coenzyme)」といいます。
酵素は体の中の反応を進める「仕事人」ですが、仕事人だけでは仕事ができない場合があります。そこで必要になるのが補酵素です。
たとえるなら「大工さんと道具」
酵素を大工さんとすると、補酵素はその手に持つ「道具」のようなものです。どんなに腕のいい大工さんでも、釘やノコギリがなければ家は建てられません。
補酵素は、反応に必要な部品を運んだり受け渡したりして、酵素の仕事を支えています。そして仕事が終わると元の形に戻り、また次の反応で使われます。

すべての酵素が補酵素を必要とするわけではない
たとえば、消化酵素のアミラーゼやペプシンは、補酵素なしで働くことができます。一方、栄養からエネルギーを取り出す代謝の酵素の多くは、補酵素がないと働けません。
つまり、補酵素がとくに活躍するのは、食べたものをエネルギーに変える場面です。
酵素の体内での働きは、こちらで詳しく解説しています。
あわせて読みたい: 酵素の体内での働きとは?
酵素・補酵素・補因子の違い

酵素の助っ人には、補酵素のほかにミネラルもあります。これらをまとめて「補因子(ほいんし)」といいます。
| 酵素 | 補酵素 | ミネラル(補因子) | |
|---|---|---|---|
| 役割 | 反応を進める主役 | 酵素の助っ人 | 酵素の助っ人 |
| 正体 | たんぱく質 | 小さな有機化合物 | 金属などの無機質 |
| 体での作られ方 | アミノ酸から作られる | 多くはビタミンから作られる | 体内では作れないので食事から摂る |
| 例 | アミラーゼ、ペプシン | NAD、コエンザイムA、コエンザイムQ10 | マグネシウム、亜鉛、鉄 |
つまり、酵素の材料はたんぱく質、補酵素の材料はビタミン、もう一つの助っ人はミネラルという関係です。酵素がしっかり働くには、この3つがそろっていることが大切になります。
「ビタミン=補酵素」ではない
ビタミンと補酵素は混同されやすいのですが、同じものではありません。
食べ物から摂ったビタミンは、体の中で形を変えてから補酵素として働きます。また、すべてのビタミンが補酵素の材料になるわけでもありません。
補酵素と深く関わっているのは、主にビタミンB群です。ビタミンAやDなどは、また別の形で体を支えています。
ビタミンB群は補酵素の材料
ビタミンB群は8種類あり、その多くが体の中で補酵素に姿を変えて働きます。
それぞれの役割と、多く含む食品をまとめました。
| ビタミン | 補酵素としての主な役割 | 多く含む食品の例 |
|---|---|---|
| ビタミンB1 | ご飯などの糖質をエネルギーに変える | 豚肉、うなぎ、玄米、大豆 |
| ビタミンB2 | 脂質や糖質をエネルギーに変える | レバー、卵、乳製品、納豆 |
| ナイアシン | エネルギー作り、アルコールの分解 | かつお、まぐろ、たらこ、鶏むね肉 |
| パントテン酸 | 糖質・脂質・たんぱく質の代謝をつなぐ | 鶏レバー、納豆、きのこ |
| ビタミンB6 | たんぱく質(アミノ酸)を作り変える | かつお、まぐろ、鶏肉、バナナ |
| ビタミンB12 | 赤血球や神経の働きを支える | しじみ、あさり、レバー、魚 |
| 葉酸 | 新しい細胞を作る | ほうれん草、ブロッコリー、枝豆 |
| ビオチン | エネルギー作り | 卵、レバー、ナッツ |
食べたものを活動のエネルギーに変えるには、ビタミンB群から作られる補酵素が欠かせないのです。
40代から気にかけたいビタミンB群
- ご飯や麺、甘いものが多い人:糖質をエネルギーに変えるにはビタミンB1が必要です。主食に偏りがちな人は、豚肉や大豆製品を一品足しましょう
- お酒をよく飲む人:アルコールの分解にもビタミンB群が使われます。飲酒量が多いと、ビタミンB1が不足しやすくなります
- 年齢を重ねた人:胃酸の分泌が減ると、ビタミンB12が吸収されにくくなることがあります
水に溶けやすいので「毎日」「汁ごと」
ビタミンB群は水に溶けるビタミンで、体にためておくことができません。まとめて摂るより、毎日の食事で少しずつ摂るのが効果的です。
また、調理中に煮汁に溶け出しやすいため、味噌汁やスープにして汁ごといただくのがおすすめです。
豚汁は、ビタミンB1を無駄なく摂れる代表的なメニューです。
コエンザイムQ10とは?
コエンザイムQ10は、体の中でエネルギーを作るときに働く補酵素の一つです。
健康食品や化粧品でよく知られていますが、もともとは私たちの体の中にある成分です。
ビタミンB群との違い:体の中で作れる
ビタミンB群から作られる補酵素と違い、コエンザイムQ10は体の中で作ることができます。また、肉や魚などの食品にも含まれています。
もともとは医薬品だった
日本では、コエンザイムQ10は心臓の病気(うっ血性心不全の症状)の治療に使われる医薬品でした。
その後、食品としても販売できるようになり、サプリメントが広く出回るようになりました。
サプリの効果と注意点
国の研究機関である医薬基盤・健康・栄養研究所は、コエンザイムQ10について次のようにまとめています。
- 疲労回复や肥満の解消、美容への効果には、十分な根拠がない
- 吐き気や下痢などの胃腸症状が出ることがある
- 血液を固まりにくくする薬(ワルファリン)の効きを弱めた例がある
- 医薬品の1日量(30mg)を超える量を含む健康食品も多く出回っている
出典:医薬基盤・健康・栄養研究所「コエンザイムQ10|「健康食品」の安全性・有効性情報」
薬を飲んでいる方、とくに血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、使う前に医師や薬剤師に相談しましょう。
NADとNMNは補酵素とどう関係する?

最近話題のNMNも、補酵素と関係があります。ただし、NMNそのものは補酵素ではありません。
| NAD | NMN | |
|---|---|---|
| 正体 | エネルギー作りなどに働く補酵素 | NADを作る途中の材料の一つ |
| 体での作られ方 | ナイアシンなどから作られる | 体の中でも作られる |
NADは、ビタミンB群の表にあった「ナイアシン」から作られる補酵素です。
NMNはそのNADを作る途中に現れる物質で、サプリメントとして研究が進められていますが、健康効果はまだ研究段階です。
あわせて読みたい: NMNとは?NADとの違い・酵素との関係と体内での役割
補酵素のサプリは必要?

普段の食事がとれている健康な人なら、補酵素のためにサプリメントを飲む必要はありません。
ビタミンB群は、肉・魚・卵・大豆製品・穀類など、さまざまな食品に含まれています。主食・主菜・副菜をそろえた食事を心がければ、必要な量を摂ることができます。
多く摂っても代謝が上がるわけではない
補酵素の材料をたくさん摂っても、その分だけエネルギー作りが活発になるわけではありません。
足りている状態でさらに摂っても、水に溶けるビタミンB群は尿として排出されます。
サプリを検討してもいいのはこんなとき
- 食事の量が少ない、偏りがちな状態が続いている
- 医師から貧血やビタミン不足を指摘された
- 胃の手術などで、栄養が吸収されにくい
このような場合も、自己判断ではなく医師や管理栄養士に相談してから使いましょう。
複数のサプリを飲むと、同じ成分を重ねて摂りすぎることがあるので、成分表示も確認してください。
補酵素に関するよくある質問
補酵素と酵素・ビタミン・サプリメントとの関係について、疑問に感じやすいポイントをまとめました。
Q1.補酵素と酵素の違いは?
酵素が仕事をするために必要な「助っ人」です。
多くはビタミンB群を材料に、体の中で作られています。
Q2. 補酵素と酵素の違いは?
酵素はたんぱく質でできた反応の主役、補酵素はそれを手伝う小さな分子です。
大工さんと道具のような関係です。
Q3. 補酵素とビタミンは同じですか?
同じではありません。
ビタミンB群の多くは、体の中で形を変えてから補酵素として働きます。また、すべてのビタミンが補酵素の材料になるわけではありません。
Q4. コエンザイムQ10のサプリは飲んだほうがいいですか?
コエンザイムQ10は体の中で作られており、疲労回复や美容への効果には十分な根拠がありません。
薬を飲んでいる方は、使う前に医師や薬剤師に相談しましょう。
Q5. 補酵素を摂るには何を食べればいいですか?
補酵素の材料になるビタミンB群は、豚肉、魚(かつお・まぐろ)、卵、納豆、玄米などに多く含まれます。豚汁のように汁ごといただく料理がおすすめです。
まとめ|補酵素は毎日の食事から生まれる「酵素の助っ人」

補酵素は、酵素が仕事をするために欠かせない助っ人です。その多くは、私たちが食事から摂るビタミンB群を材料に、体の中で作られています。
- 補酵素は酵素の「道具」。とくにエネルギー作りで活躍する
- 酵素の材料はたんぱく質、補酵素の材料はビタミン、もう一つの助っ人はミネラル
- ビタミンB群は豚肉、魚、卵、納豆、玄米などに多い
- コエンザイムQ10も補酵素の一つ。体の中で作られ、サプリの効果は限定的
- 健康な人なら、補酵素のためにサプリを飲む必要はない
まずは今週の献立に、豚汁や納豆ご飯を一度加えてみましょう。
あわせて読みたい: 酵素とは?40代から知っておきたい基礎知識
参考資料
| 資料 | 裏づける箇所 |
|---|---|
| 医薬基盤・健康・栄養研究所「コエンザイムQ10|「健康食品」の安全性・有効性情報」 | コエンザイムQ10の役割、医薬品としての使用、有効性と安全性 |
| 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書」 | ビタミンB群の役割、飲酒や加齢との関係 |
| 文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年) | ビタミンB群の表の食品例 |

