「寝ても疲れが取れない」「脂っこいものが胃にもたれる」「同じように食べているのに太りやすい」。そんな不調を感じて調べていると、「それは酵素不足のサイン」という説明に出会うことがあります。
この記事では、「酵素不足」という言葉の正体と、40代・50代によくある不調ごとの本当の原因を解説します。
さらに、医療機関で相談したほうがよい症状と、今日からできる対処法も紹介します。
3行でわかるこの記事の結論
「酵素不足」とは?

「酵素不足」は、病院で診断される病名ではありません。
健康食品の広告や健康情報で、疲れや胃もたれ、太りやすさなどをまとめて説明するときに使われている言葉です。
なぜ「酵素不足」という言葉が広まったのか
背景にあるのは、「人が一生に作れる酵素の量は決まっていて、年齢とともに減っていく」という考え方です。
この考え方に立つと、年齢とともに感じるさまざまな不調を、「酵素が減ったから」とひとことで説明できます。
わかりやすくて納得しやすいため広まりましたが、実際には酵素は体の中で必要に応じて毎日作られています。
この考え方の由来と問題点は、こちらで詳しく検証しています。
あわせて読みたい: 消化酵素と代謝酵素の違いとは?
年齢とともに変化する酵素もあるが、不調の原因とは限らない
体の中には数千種類もの酵素があり、年齢とともに働きが変わるものもあれば、ほとんど変わらないものもあります。
すべての酵素が一斉に減るわけではありません。
そして、40代・50代の不調には、酵素よりもはるかに大きな影響を与えているものがあります。
「酵素不足」とひとくくりにしてしまうと、本当の原因を見落とすことになりかねません。
次の章で、症状ごとに見ていきましょう。
症状別:「酵素不足のサイン」といわれる不調の本当の原因
「酵素不足のサイン」としてよく挙げられる不調について、実際に考えられる原因をまとめました。
ご自身の状態に近いものを探してみてください。
| 気になる不調 | よくある原因 | 隠れていることがある病気の例 |
|---|---|---|
| 疲れやすい・だるい | 睡眠不足、ストレス、運動不足、更年期 | 貧血、甲状腺の病気、糖尿病、うつ病 |
| 胃もたれ・おなかの張り | 食べすぎ、早食い、脂っこい食事、夜遅い食事 | 胃炎、胃潰瘍、胃がん、膵臓の病気 |
| 太りやすい | 筋肉量の減少、活動量の低下、更年期 | 甲状腺の病気 |
| 便秘 | 食物繊維や水分の不足、運動不足 | 大腸がん、薬の副作用 |
| 冷え | 筋肉量の減少、更年期 | 貧血、甲状腺の病気 |
| 肌荒れ・肌の乾燥 | 睡眠不足、栄養の偏り、更年期 | 皮膚の病気 |
| 眠りが浅い・夜中に目が覚める | ストレス、寝る前の飲酒やスマホ、更年期 | 睡眠時無呼吸症候群、うつ病 |
この表を見ると、「更年期」と「筋肉量の減少」が何度も登場することに気づくはずです。
40代・50代の不調を考えるうえで、この2つは欠かせません。
また、右の列にある病気は、どれも中高年に増えるものです。
症状が長く続くときは、「年のせい」「酵素不足」と決めつけず、検査を受けることが大切です。
40代・50代の不調に関わる3つの変化

前の章の表に何度も登場した原因を、もう少し詳しく見てみましょう。
変化① 更年期によるホルモンの変化
女性の場合、閉経をはさむ前後約10年間を「更年期」といいます。多くの人は40代半ばから50代半ばにあたります。
女性ホルモン(エストロゲン)が大きく減ることで、次のような症状が出やすくなります。
- ほてり、のぼせ、大量の汗
- 疲れやすさ、だるさ
- 眠りが浅い、夜中に目が覚める
- イライラ、気分の落ち込み
- 肌の乾燥、冷え
これらは、「酵素不足のサイン」として挙げられる不調と多くが重なります。
酵素を補うことを考える前に、更年期の可能性を疑ってみることが大切です。更年期の症状は、婦人科で相談できます。
出典:日本産科婦人科学会「更年期障害」
男性も、40代以降に男性ホルモン(テストステロン)が減ることで、疲れやすさ、やる気の低下、眠りの質の低下などが起こることがあります。
これは「男性更年期」と呼ばれ、泌尿器科などで相談できます。
変化② 筋肉量の減少
筋肉は、何もしないと年齢とともに少しずつ減っていきます。
筋肉が減ると基礎代謝が下がって太りやすくなるだけでなく、体を温める力や体力も落ち、冷えや疲れやすさにもつながります。
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」
変化③ 生活の変化と心の負担
40代・50代は、仕事の責任が重くなったり、子どもの進学や親の介護が重なったりする年代です。
忙しさから「睡眠時間が削られ、食事が不規則になり、運動する時間もなくなる。」こうした生活の変化が重なると、体調にも影響が出ます。
「最近、自分のために使える時間があったかどうか」を振り返ってみることも、不調の原因を探る手がかりになります。
こんな症状は、酵素より先に受診を
次のような場合は、健康食品や生活の見直しだけで様子を見ずに、医療機関で相談しましょう。
すぐに受診したい症状
- 黒っぽい便や血便が出た
- 思い当たる理由がないのに体重が減っている
- 動悸や息切れがして、以前より明らかに疲れやすい
- 食べ物が飲み込みにくい、吐き気が続く
早めに相談したい症状(2週間以上続くとき)
| 症状 | 相談先の目安 |
|---|---|
| 胃もたれ、胃の痛み、便秘や下痢がくり返す | 内科、消化器内科 |
| 寝ても疲れが取れない、だるさが続く | 内科(まず血液検査で貧血や甲状腺を確認) |
| ほてり、汗、不眠、気分の波が激しい(女性) | 婦人科 |
| 疲れやすさ、やる気の低下(男性) | 泌尿器科、メンズヘルス外来 |
| 寝ている間にいびきが止まると言われた | 内科、呼吸器内科、睡眠外来 |
| 気分の落ち込みが続き、楽しいことが楽しめない | 心療内科、精神科 |
どこに行けばいいかわからないときは、まずかかりつけの内科で相談すれば大丈夫です。
また、年に1回の健康診断やがん検診は、不調の原因を早く見つけるいちばんの近道です。
あわせて読みたい:健康診断のAST・ALT・γ-GTPとは?
不調別に今日からできること

受診するほどではないけれど気になる、というときは、不調に合わせて生活を見直してみましょう。
| 不調 | まず試したいこと |
|---|---|
| 疲れやすい | 就寝・起床時刻をそろえ、睡眠を6時間以上確保する |
| 胃もたれ | 腹八分目とよく噛むことを意識し、寝る3時間前までに夕食を済ませる |
| 太りやすい | 毎食たんぱく質のおかずを一品足し、週に2?3回はスクワットなどの筋トレを |
| 便秘 | 野菜・きのこ・海藻で食物繊維を増やし、水分をこまめにとる |
| 冷え | 歩く時間を増やし、足の筋肉を動かす |
| 眠りが浅い | 朝に日の光を浴び、寝る前のスマホと飲酒を控える |
睡眠・運動の目安は、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」をもとにしています。
体調をメモして「自分のパターン」を知る
不調の原因を探るのに役立つのが、簡単な体調メモです。手帳やスマホに、1日1行で構いません。
- 寝た時刻と起きた時刻
- 夕食の時間と、食べすぎたかどうか
- 歩数(スマホで自動記録できます)
- その日の体調(◎○△など)
2〜3週間続けると、「夜更かしした翌日は疲れやすい」「夜遅く食べた翌朝は胃もたれする」といった自分のパターンが見えてきます。
受診するときにも、このメモを医師に見せると役に立ちます。
酵素ドリンクや生野菜で「酵素を補う」必要はない
食べた酵素は消化されるため、体の酵素の代わりにはなりません。体の酵素は、食事から摂るたんぱく質を材料に体の中で作られています。
詳しくはこちらをご覧ください。
あわせて読みたい: 食物酵素とは?多く含む食品と加熱の影響、料理に生かすコツをやさしく解説
あわせて読みたい: 酵素とは?40代から知っておきたい基礎知識
中高年の「酵素不足」に関するよくある質問
中高年になると気になりやすい「酵素不足」について、よくある疑問をまとめました。
Q1. 年をとると酵素は減りますか?
一部の酵素の働きが年齢で変わることはありますが、すべての酵素が一斉に減るわけではありません。中高年の不調には、更年期や筋肉量の減少のほうが大きく関わっています。
Q2. 酵素不足かどうかを調べる検査はありますか?
「酵素不足」は病名ではないため、それを調べる検査もありません。
ただし、健康診断の血液検査では、肝臓や膵臓の状態を知るために、血液中の酵素の値(AST、ALT、γ-GTPなど)を測っています。これらは臓器の状態を表す指標で、「酵素が足りているか」を測るものではありません。
Q3. 疲れやすいのは更年期ですか?
更年期の可能性はありますが、貧血や甲状腺の病気などでも似た症状が出ます。自己判断せず、まずは内科や婦人科で相談しましょう。
Q4. 酵素ドリンクで酵素不足は解消できますか?
酵素ドリンクの酵素は消化されるため、体の酵素を補うことはできません。
不調があるときは、飲み物で様子を見るよりも、原因を確かめることを優先しましょう。
Q5. まず何から始めればいいですか?
気になる不調が2週間以上続いているなら、まず受診しましょう。
そうでなければ、睡眠時間の確保と、毎食たんぱく質のおかずを一品足すことから始めるのがおすすめです。
まとめ|「酵素不足」で片づけず、本当の原因に目を向けよう

40代・50代の疲れや胃もたれ、太りやすさには、それぞれに原因があります。「
酵素不足」というひと言で片づけてしまわず、自分の体の変化に向き合うことが大切です。
- 「酵素不足」は病名ではなく、調べる検査もない
- 中高年の不調には、更年期、筋肉量の減少、生活の変化が大きく関わる
- 貧血や甲状腺の病気など、似た症状の病気もある
- 不調が2週間以上続くときは、まず受診する
- 体調メモで、自分の不調のパターンを知る
まずは今日から、寝た時刻とその日の体調を手帳に1行書くことから始めてみませんか。
参考資料
| 資料 | 裏づける箇所 |
|---|---|
| 日本産科婦人科学会「更年期障害」 | 更年期の定義(閉経前後の10年間)、エストロゲンの低下、主な症状 |
| 厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」 | 筋肉量の減少と基礎代謝の低下 |
| 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 | 睡眠6時間以上、朝の光、寝る前の習慣 |
| 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」 | 筋トレ週2〜3回 |
| 日本内分泌学会「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)」(2024年12月更新) | 男性更年期の段落、受診先の表(男性の行) |

