腸内環境とは、腸内にすむ細菌の構成や働き、腸内の状態などを含めて表す言葉です。
私たちの腸内には多種多様な細菌がすんでおり、食事内容や生活習慣、年齢、体調などによって、その構成は一人ひとり異なります。
「善玉菌を増やせばよい」「発酵食品を食べれば整う」と思われがちですが、腸内環境は特定の食品だけで決まるものではありません。
食物繊維を含む食事、適度な運動、睡眠、水分補給など、毎日の習慣を総合的に考えることが大切です。
この記事では、腸内環境と腸内細菌・腸内フローラの関係、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の特徴、腸内環境に影響する要因、日常生活で意識したい整え方を初心者向けにわかりやすく解説します。
腸内環境とは?

腸内環境とは、腸内にすむ細菌の構成や働き、細菌が作り出す物質、便通などを含めた腸内の状態を表す言葉です。
私たちの腸内には多種多様な細菌がすんでおり、互いに関わりながら一つの集団を形成しています。
これらの腸内細菌は、食べ物のうち小腸で消化・吸収されずに大腸へ届いた成分などを利用して、さまざまな物質を作り出します。
腸内環境を考える主な要素
- どのような腸内細菌がすんでいるか
- それぞれの細菌がどの程度存在しているか
- 腸内細菌がどのような物質を作っているか
- 便の回数や形、排便のしやすさ
- おなかの張りや不快感などの有無
腸内細菌の構成は、食事、年齢、生活環境、運動、睡眠、ストレス、薬の使用など、さまざまな要因の影響を受けます。
また、同じ食品を食べても反応には個人差があるため、すべての人に共通する一つの「理想的な腸内環境」があるとは限りません。
「善玉菌が多ければ多いほどよい」「毎日排便がなければ腸内環境が悪い」といった一つの基準だけで判断するのではなく、食事内容や生活習慣、便通、体調などを総合的に考えることが大切です。
腸内環境は、特定の食品を一度食べただけで決まるものではありません。
さまざまな食品を組み合わせた食事と、無理なく続けられる生活習慣を積み重ねながら、自分の体調を確認していくことが基本となります。
腸内にはどのような細菌がすんでいる?

人の腸内には、ビフィズス菌や乳酸菌をはじめ、多種多様な細菌がすんでいます。
その多くは大腸に存在し、菌どうしが互いに関わりながら複雑な集団を形成しています。
腸内細菌は、体への働きによって「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つに分けて説明されることがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
善玉菌とは
善玉菌とは、腸内で人の健康維持に役立つ働きをする細菌をまとめた呼び方です。
代表例として、ビフィズス菌や一部の乳酸菌などが挙げられます。
食物繊維やオリゴ糖などを利用し、乳酸や酢酸などの物質を作る菌もいます。
こうした物質によって腸内が酸性に傾くと、酸性の環境を苦手とする細菌が増えにくくなると考えられています。
ただし、「乳酸菌」という名前が付く菌がすべて同じ働きをするわけではありません。
菌の種類や菌株によって性質が異なるため、善玉菌という言葉は大きなまとまりとして理解しておきましょう。
悪玉菌とは
悪玉菌とは、腸内で増えすぎると、体に好ましくない物質を作ることがある細菌をまとめた呼び方です。
たんぱく質などを利用して、アンモニアをはじめとする物質を作る菌もいます。
「悪玉菌」と呼ばれていても、腸内から完全になくせばよいという意味ではありません。
腸内にはさまざまな菌が共存しており、特定の菌だけを排除するのではなく、腸内細菌全体の状態を考えることが大切です。
日和見菌とは
日和見菌とは、善玉菌や悪玉菌のどちらにも明確に分けにくい細菌を説明するときに使われる呼び方です。
腸内細菌の中では、このグループに含めて説明される菌が多いとされています。
「腸内で優勢な菌の影響を受けて働きが変わる」と説明されることもありますが、実際の腸内細菌の働きは複雑です。
同じ菌でも、腸内の環境やほかの菌との関係によって異なる働きを示すことがあります。
腸内細菌は、単純な善悪だけでは判断できません
善玉菌・悪玉菌・日和見菌という分類は、腸内細菌の働きを分かりやすく理解するための便宜的なものです。実際には、菌の種類や菌株、存在する場所、ほかの菌との組み合わせなどによって働きが変わります。
そのため、「善玉菌だけを増やす」「悪玉菌をすべて減らす」と考えるよりも、多様な食品を取り入れ、さまざまな腸内細菌が共存できる環境を支えることが基本です。
次の章では、こうした腸内細菌の集まりを表す「腸内フローラ」と「腸内細菌叢」という言葉について整理します。
腸内フローラと腸内細菌叢とは?
腸内細菌について調べていると、「腸内フローラ」や「腸内細菌叢」という言葉を目にすることがあります。どちらも、腸内にすむ多種多様な細菌が形成する集団を表す言葉です。
腸内細菌叢とは
腸内細菌叢とは、腸内にすむさまざまな細菌の集まりを指します。「叢」には、草木などが群がって生えるという意味があり、多くの種類の細菌が一つの場所に集まっている様子を表しています。
腸内細菌は、それぞれが単独で存在しているわけではありません。食べ物から大腸まで届いた成分を利用したり、ほかの菌が作った物質を利用したりしながら、互いに関わっています。
そのため、腸内細菌を考えるときは、特定の菌がいるかどうかだけでなく、どのような菌が集まり、どのような働きをしているかを見ることが重要です。
腸内フローラとは
腸内フローラも、腸内細菌叢とほぼ同じ意味で使われています。
「フローラ(flora)」は、もともとある地域に生育する植物の集まりを表す言葉です。
多種多様な細菌が腸内に集まっている様子を花畑にたとえ、日本では一般向けに「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。
研究や医療に関する情報では「腸内細菌叢」や「腸内微生物叢」、一般向けの健康情報では「腸内フローラ」という表現が多く使われます。
呼び方は異なりますが、日常的には同じものを指していると考えてよいでしょう。
| 言葉 | 主な意味 | 使われ方 |
|---|---|---|
| 腸内細菌叢 | 腸内にすむ細菌の集まり | 研究・医療情報などで使われる |
| 腸内フローラ | 腸内細菌叢を花畑にたとえた呼び方 | 一般向けの健康情報などで使われる |
| 腸内環境 | 腸内細菌の構成や働き、便通などを含む腸内の状態 | 腸内の状態を広く表すときに使われる |
なお、腸内には細菌だけでなく、古細菌や真菌、ウイルスなども存在しています。
これらを含む腸内の微生物全体を表す場合は、「腸内微生物叢」という言葉が使われることもあります。
腸内フローラと腸内環境は、同じ意味ではありません
腸内フローラは腸内細菌の集まりを指す言葉です。一方、腸内環境は、腸内細菌の構成や働き、細菌が作る物質、便通などを含めた、より広い状態を表します。
腸内フローラの構成には大きな個人差があります。また、食事や年齢、生活環境などによっても変化するため、すべての人に共通する一つの理想的な構成が決まっているわけではありません。
次の章では、腸内細菌の構成が一人ひとり異なる理由について見ていきましょう。
腸内細菌の構成は一人ひとり異なる

腸内にすむ細菌の種類や割合は、すべての人で同じではありません。
顔や指紋が一人ひとり異なるように、腸内細菌叢にも大きな個人差があります。
同じ年代で似た食生活を送っている人でも、腸内細菌の構成がまったく同じになることはありません。
また、同じ発酵食品や食物繊維を取り入れても、おなかの状態や便通への感じ方には違いが生じます。
腸内細菌の構成に個人差が生まれる理由
腸内細菌叢は、乳幼児期から形成され、その後の食事や生活環境などの影響を受けながら変化していきます。
腸内細菌の構成に関係する主な要因として、次のようなものが挙げられます。
- 年齢
- 普段の食事内容
- 生活する地域や食文化
- 運動や睡眠などの生活習慣
- 体調や健康状態
- 抗菌薬をはじめとする薬の使用
これらの要因が複雑に重なるため、「この食品を食べれば、誰でも同じ腸内細菌が増える」とは限りません。
腸内細菌の構成は変化する
成人の腸内細菌叢には、その人なりの特徴がある一方で、生涯まったく変わらないわけではありません。
毎日の食事内容や生活リズム、体調などによって、腸内細菌の種類や割合は変化することがあります。
食生活が大きく変わったときや、抗菌薬を使用したときなどには、通常より大きな変化が生じる場合もあります。
ただし、薬は病気の治療に必要なものです。腸内細菌への影響だけを理由に、処方された薬を自己判断で中止したり、量を変えたりしないでください。
気になることがある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
理想的な腸内細菌の割合は一つではない
善玉菌・悪玉菌・日和見菌について、特定の割合が理想として紹介されることがあります。
しかし、腸内細菌の調べ方や分類方法は一つではなく、健康な人の腸内細菌叢にも幅広い個人差があります。
そのため、特定の菌の割合だけを見て、腸内環境の良し悪しを一律に判断することはできません。
市販の腸内細菌検査を利用する場合も、結果は採便した時点の一つの情報として受け取り、病気の診断とは区別して考える必要があります。
大切なのは、他人の腸内細菌と比べることではありません
一つの理想的な菌の構成を目指すのではなく、食事や生活習慣、便通、体調などを総合的に確認し、自分に無理なく続けられる習慣を考えましょう。
腸内細菌の構成にはさまざまな要因が関係しています。
次の章では、その中でも日常生活と関係の深い要因について詳しく見ていきます。
腸内環境に影響する主な要因

腸内環境は、食事だけで決まるものではありません。
年齢や生活する地域、運動、睡眠、ストレス、薬の使用など、さまざまな要因が複雑に関係しています。
自分で変えられない要因もありますが、日々の食事や生活習慣には見直せる部分があります。
ここでは、腸内環境と関係する主な要因を整理します。
食事内容
毎日の食事は、腸内細菌が利用する成分を腸へ届けるため、腸内環境と関係の深い要因です。
特に、食物繊維や一部のオリゴ糖などは、小腸で消化・吸収されずに大腸へ届き、腸内細菌に利用されます。
一方で、特定の食品に偏った食事を続けると、腸内細菌が利用できる成分も偏りやすくなります。
「腸活によい」とされる一つの食品だけを食べ続けるのではなく、穀類、豆類、野菜、果物、きのこ、海藻など、さまざまな食品を組み合わせることが基本です。
年齢
腸内細菌叢は乳幼児期から形成され、成長とともに変化します。
成人後も一定の特徴を保ちながら、加齢や食生活、健康状態などの影響を受けることがあります。
年齢だけが腸内環境を決めるわけではありませんが、年齢を重ねると、食事量や活動量、服用する薬なども変わりやすくなります。
こうした複数の変化が腸内環境に関係すると考えられます。
運動や活動量
運動や普段の活動量も、腸内環境との関連が研究されています。
ただし、運動だけで特定の腸内細菌を増やせると単純に判断することはできません。
適度に体を動かすことは、健康維持だけでなく、腸の動きや生活リズムを支えるうえでも大切です。
特別な運動を始めるよりも、ウォーキングや家事など、無理なく続けられる活動を増やすことから考えましょう。
睡眠や生活リズム
睡眠時間や食事の時間が不規則になると、生活全体のリズムも乱れやすくなります。
睡眠と腸内細菌の関係については研究が進められていますが、両者の関係は複雑で、睡眠だけを整えれば腸内環境が改善するとは限りません。
まずは、起床・就寝・食事の時間をできる範囲で一定にし、十分な休息を確保することが、生活習慣を整える基本になります。
ストレス
緊張したときにおなかが痛くなったり、便通が変化したりするように、脳と腸は神経などを通じて互いに関係しています。
この関係は「脳腸相関」と呼ばれます。
ストレスへの反応には個人差があります。
ストレスを完全になくそうとするのではなく、休息を取る、軽く体を動かす、生活のリズムを見直すなど、自分に合った方法で対処することが大切です。
薬の使用や体調の変化
薬の中には、腸内細菌叢に影響を与えるものがあります。
特に抗菌薬は、病気の原因となる細菌だけでなく、腸内にすむほかの細菌にも影響する場合があります。
ただし、抗菌薬をはじめとする薬は、感染症や病気の治療に必要なものです。
腸内細菌への影響を心配して、処方された薬を自己判断で中止したり、量を変えたりしてはいけません。気になる症状がある場合は、医師や薬剤師に相談してください。
感染症や消化器の病気、食事量が減るような体調不良なども、腸内環境や便通に影響することがあります。
腸内環境は一つの要因だけで決まりません
食事、年齢、運動、睡眠、ストレス、薬の使用などが互いに関係しています。すべてを一度に変えようとせず、食事や生活リズムなど、取り組みやすいことから少しずつ見直しましょう。
腸内細菌の状態を直接確認することは簡単ではありませんが、便通やおなかの状態は日常生活の中で確認できます。
次の章では、腸内環境の状態を考えるときに、何を目安にすればよいのかを説明します。
腸内環境の状態は何から判断できる?
腸内細菌の種類や割合を、日常生活の中で直接見ることはできません。
そのため、腸内環境を考えるときは、便の状態や排便のしやすさ、おなかの調子などを確認することが一つの目安になります。
ただし、便や体調だけから腸内細菌の構成を特定したり、病気の有無を判断したりすることはできません。
普段の状態と比べながら、変化が続いていないかを見ることが大切です。
便の回数と排便のしやすさ
排便回数には個人差があり、毎日排便がないからといって、すぐに腸内環境が悪いと判断することはできません。
回数だけでなく、強くいきまなければ出ない、排便後も便が残っている感じがする、便意があるのに出にくいといった状態も確認しましょう。
反対に、排便回数が急に増えた場合や、水のような便が続く場合も、体調の変化として注意が必要です。
便の硬さと形
便の形は、腸内での水分量や便が移動する速さなどによって変わります。
硬く小さな粒状の便は、腸内に長くとどまって水分が少なくなっている可能性があります。
一方、水分が多く形のない便は、腸内を速く通過している場合があります。
便の形を分類する方法として、医療現場などでは「ブリストル便形状スケール」が使われています。
便を硬いものから水のようなものまで7段階に分けて確認する方法で、表面が滑らかなバナナ状や、やわらかいソーセージ状の便は、一般的に排出しやすい形とされています。
ただし、一度だけ硬い便ややわらかい便が出たからといって、腸内環境に問題があるとは限りません。
数日から数週間の変化を確認することが大切です。
便の色やにおい
健康な人の便は、一般的に黄褐色から茶褐色をしています。ただし、便の色は食べたものや薬、サプリメントなどによっても変化します。
においについても、食事内容や便が腸内にとどまった時間などの影響を受けるため、「においが強いから悪玉菌が多い」と単純に判断することはできません。
赤い血が混じる便や、タールのように黒い便、白っぽい便などが見られた場合は、自己判断せず医療機関へ相談してください。
おなかの状態
便だけでなく、普段のおなかの状態も確認しましょう。
- おなかの張りが続いていないか
- 腹痛や不快感がないか
- ガスが急に増えていないか
- 食欲に変化がないか
- 排便すると症状が軽くなるか
おなかの張りやガスは、食事内容や食べる速さ、緊張などでも生じます。
一つの症状だけで腸内環境の良し悪しを決めず、いつから、どのくらい続いているかを確認しましょう。
腸内細菌検査で分かること
便を提出して腸内細菌の種類や割合を調べる、腸内細菌検査のサービスもあります。
自分の腸内細菌の特徴を知る参考にはなりますが、検査方法や分析基準はサービスによって異なります。
また、腸内細菌の構成は採便した時点の食事や体調などの影響を受ける可能性があります。
検査結果だけで健康状態や病気を診断できるものではありません。
一度の便や一つの症状だけでは判断できません
排便回数、便の形、排便のしやすさ、おなかの状態などを、普段の自分と比べて確認しましょう。急な変化や気になる症状が続く場合は、腸活だけで対応せず、医療機関へ相談することが大切です。
便やおなかの状態を確認することは、生活習慣を見直すきっかけになります。
次の章では、腸内環境を支えるために意識したい食事について説明します。
腸内環境を支える食事の考え方

腸内環境を考えるときは、特定の食品を追加することよりも、毎日の食事全体を見直すことが大切です。
ヨーグルトや納豆など、一つの食品だけを続けて食べても、食事全体が偏っていれば必要な栄養素を十分に摂れないことがあります。
主食・主菜・副菜を基本に、さまざまな食品を組み合わせましょう。
さまざまな食品を組み合わせる
腸内細菌は、私たちが食べた食品に含まれるさまざまな成分を利用しています。
特定の食品だけに偏らず、穀類、豆類、野菜、果物、きのこ、海藻、魚、肉、卵、乳製品などを、体調や食習慣に合わせて組み合わせることが基本です。
毎食すべてをそろえるのが難しい場合は、一日または数日単位で食事全体を確認しても構いません。
食べていない食品を一つ加えることから始めると、無理なく続けやすくなります。
食物繊維を含む食品を取り入れる
食物繊維は、人の消化酵素では消化されにくく、大腸まで届く食品成分です。
便の材料になるほか、一部は腸内細菌によって分解・利用されます。
食物繊維を含む代表的な食品には、次のようなものがあります。
- 玄米、麦ごはん、全粒粉パンなどの穀類
- 大豆、納豆、いんげん豆などの豆類
- ごぼう、ブロッコリー、にんじんなどの野菜
- しいたけ、しめじなどのきのこ類
- わかめ、ひじきなどの海藻類
- りんご、バナナ、みかんなどの果物
- さつまいも、里いもなどのいも類
食物繊維を急に多く摂ると、おなかの張りやガスが気になる場合があります。
これまでの摂取量が少なかった人は、体調を見ながら少しずつ増やしましょう。
発酵食品を食事の一部として取り入れる
ヨーグルト、納豆、味噌、発酵漬物などの発酵食品も、食事の選択肢になります。
ただし、すべての発酵食品に生きた微生物が含まれているわけではありません。
また、発酵食品を食べれば、腸内に特定の菌がそのまますみ着くとは限りません。
発酵食品だけに頼らず、食物繊維を含む食品や主菜などと組み合わせ、献立の一部として取り入れましょう。
味噌や漬物、チーズなどは塩分、甘酒や乳酸菌飲料などは糖類の量にも注意が必要です。
発酵食品の種類や選び方、食物繊維との組み合わせは、腸活に発酵食品が役立つ理由とは?種類・選び方・食べ方を解説で詳しく紹介しています。
水分を適切に補給する
水分は、便の硬さや排便のしやすさを考えるうえでも大切です。
のどの渇きを感じる前に、食事や休憩の際など、生活の中でこまめに補給しましょう。
ただし、水を多く飲むだけで便秘や腸内環境の問題が解決するわけではありません。
食事量や食物繊維、運動、便意を我慢していないかなども併せて確認する必要があります。
心臓や腎臓の病気などで水分量について指示を受けている場合は、医師の指示に従ってください。
一つの食品より、食事全体の組み合わせを意識しましょう
食物繊維や発酵食品は、腸内環境を支える食事の一部です。主食・主菜・副菜を基本に、さまざまな食品を無理なく取り入れることが大切です。
食事とともに、運動や睡眠、排便習慣なども腸内環境と関係しています。
次の章では、日常生活で意識したい習慣について見ていきましょう。
腸内環境を支える生活習慣
腸内環境を考えるときは、食事だけでなく、運動、睡眠、排便の習慣、ストレスへの対処なども併せて見直すことが大切です。
すべてを一度に変える必要はありません。
自分の生活に取り入れやすく、無理なく続けられることから始めましょう。
無理のない範囲で体を動かす
適度な身体活動は、健康維持に加え、腸の動きや排便のリズムを支えるうえでも役立ちます。
特別な運動を始めなくても、次のような活動から取り入れられます。
- 近い場所へは歩いて移動する
- エレベーターではなく階段を使う
- 家事の合間に軽く体を伸ばす
- 食後に無理のない範囲で歩く
- 長時間座り続けず、定期的に立ち上がる
運動量は体力や健康状態によって調整してください。
持病がある人や、運動中に胸の痛み、強い息切れ、めまいなどが現れる人は、医師に相談したうえで取り組みましょう。
睡眠と食事のリズムを整える
起床・就寝・食事の時間が大きく変わる生活では、排便のリズムも不規則になりやすくなります。
毎日まったく同じ時間にそろえる必要はありませんが、できる範囲で起床時間や食事時間を一定にし、十分な睡眠を確保しましょう。
朝食を取る習慣は、一日の生活リズムを作るきっかけにもなります。
ただし、食欲がないときに無理に多く食べる必要はありません。
少量から試すなど、体調に合わせて調整してください。
便意を我慢しない
忙しさなどから便意を繰り返し我慢すると、排便のタイミングを逃しやすくなります。
便意を感じたときは、できるだけトイレへ行ける環境を整えましょう。
朝食後など、比較的落ち着いて過ごせる時間にトイレへ行く習慣を作る方法もあります。
ただし、便意がないのに長時間座ったり、強くいき続けたりする必要はありません。
排便するときは、足元に低い台を置いて膝を少し高くし、前かがみになると、いきみやすさが軽減される場合があります。
転倒しないよう、安定した姿勢を保ってください。
休息を取り、ストレスをため込みすぎない
脳と腸は、神経などを通じて互いに関係しています。
緊張や不安が続くと、おなかの張り、腹痛、便秘、下痢などを感じる人もいます。
ストレスを完全になくすことは難しいため、次のような方法で気持ちを切り替える時間を作りましょう。
- ゆっくり呼吸する
- 軽く体を動かす
- 入浴や読書で休息する
- 趣味を楽しむ時間を作る
- 一人で抱え込まず、周囲へ相談する
おなかの症状が不安を強め、その不安によってさらに症状が気になることもあります。
症状が続いて日常生活に影響している場合は、我慢せず医療機関へ相談してください。
体調の変化を簡単に記録する
食事内容、排便回数、便の形、おなかの状態、睡眠などを簡単に記録すると、自分の生活と体調の傾向を振り返りやすくなります。
細かく記録しすぎると負担になるため、「便が硬かった」「外食が続いた」「よく眠れなかった」など、気付いたことを短く残す程度で構いません。
続けられる小さな習慣を選びましょう
腸内環境は、運動や睡眠など一つの習慣だけで決まるものではありません。食事と組み合わせながら、今の生活に無理なく取り入れられることを積み重ねることが大切です。
生活習慣を見直しても症状が続く場合や、普段とは異なる変化が見られる場合は、腸活だけで対応しないことも重要です。
次の章では、医療機関へ相談したい症状について説明します。
腸内環境について医療機関へ相談したい症状
便秘や下痢、おなかの張りなどは、食事や生活リズムの変化によって一時的に起こることがあります。
しかし、症状が続く場合や、普段とは明らかに異なる変化がある場合は、「腸内環境が乱れているだけ」と自己判断しないことが大切です。
腸活のために食事や生活習慣を見直しても、病気の診断や治療の代わりにはなりません。
気になる症状があるときは、内科や消化器内科へ相談しましょう。
便に血が混じる・黒い便が出る
便の表面に赤い血が付く場合や、便に血が混じっている場合は、痔だけでなく、大腸の炎症、ポリープなど、さまざまな原因が考えられます。
見た目だけで原因を判断することはできません。
また、のりの佃煮のように黒く、粘りのある便は「タール便」と呼ばれ、胃や十二指腸などからの出血によって起こることがあります。
鉄剤や一部の食品によって便が黒くなる場合もありますが、原因が分からない黒い便や血便が見られたときは、早めに医療機関へ相談してください。
便秘や下痢が続く・便通が急に変わった
便秘や下痢が長く続く場合や、これまで安定していた便通が急に変化した場合は、食事やストレス以外の原因が隠れていることもあります。
次のような変化が続く場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
- 便秘と下痢を繰り返す
- 水のような便が続く
- 便が以前より細くなった状態が続く
- 強くいきんでも便が出にくい
- 排便後も便が残っている感じが続く
- 夜中に腹痛や下痢で目が覚める
便通の変化だけで病気を特定することはできませんが、症状が続く期間や程度、ほかの症状の有無を医師へ伝えることが大切です。
腹痛やおなかの張りが続く
食べすぎやガスなどによって、一時的に腹痛やおなかの張りを感じることはあります。
しかし、痛みを繰り返す、徐々に強くなる、おなかの張りが続く、排便しても改善しないといった場合は、自己判断で食事制限やサプリメントを続けず、医療機関へ相談しましょう。
体重減少・発熱・貧血などを伴う
食事量や運動量を変えていないのに体重が減る場合や、便通の変化とともに発熱、食欲不振、強いだるさなどが続く場合も注意が必要です。
健康診断で貧血を指摘された場合や、顔色が悪い、息切れしやすい、動悸がするといった症状がある場合は、消化管からの出血などが関係していないか確認するためにも医療機関へ相談してください。
速やかな受診を考えたい症状
次のような症状がある場合は、通常の腸活を試して様子を見るのではなく、速やかに医療機関を受診してください。
- 突然の激しい腹痛がある
- 腹痛が強くなり続けている
- 大量の血便が出た
- 黒い便とともに、めまいやふらつきがある
- 嘔吐が続き、水分を摂れない
- 激しい下痢で意識がぼんやりする
- おなかが強く張り、便やガスが出ない
- 冷や汗、息苦しさ、意識が遠のく感じがある
症状が激しい、意識がはっきりしないなど、緊急性が高いと感じた場合は、ためらわず救急車を要請してください。
「腸内環境の問題」と決めつけないことが大切です
便通やおなかの症状には、さまざまな原因があります。普段との違いが続く場合や、血便・黒い便・強い腹痛などがある場合は、発酵食品やサプリメントで対処しようとせず、医療機関へ相談しましょう。
受診する際は、症状が始まった時期、便の回数や状態、腹痛の場所、食事や薬の変化などを伝えると、診察の参考になります。
腸内環境に関するQ&A
腸内環境に関するよくある疑問を、Q&A形式でわかりやすく解説します。
腸内環境は短期間で変わりますか?
食事や体調、薬の使用などによって、腸内細菌の構成が短期間で変化することはあります。
ただし、一時的な変化と長く続く変化は同じではありません。
短期間で結果を出そうとせず、食事や生活習慣を無理なく続けることが大切です。
善玉菌は多いほどよいのでしょうか?
善玉菌が多ければ多いほど健康になるとは、一概にはいえません。
善玉菌・悪玉菌・日和見菌という分類は、腸内細菌の働きを理解するための便宜的なものです。
特定の菌の数だけではなく、多様な菌の働きや食事、便通、体調などを総合的に考える必要があります。
毎日ヨーグルトを食べれば腸内環境は整いますか?
ヨーグルトは発酵食品の一つですが、毎日食べれば誰でも同じ変化が得られるとは限りません。
乳酸菌やビフィズス菌の種類、食べる量、もともとの腸内細菌の構成などによっても反応は異なります。
ヨーグルトだけに頼らず、食物繊維を含む食品などと組み合わせ、食事全体を整えましょう。
乳製品がおなかに合わない場合は、無理に食べる必要はありません。
毎日排便がないと腸内環境が悪いのでしょうか?
排便回数には個人差があるため、毎日出ないことだけで腸内環境が悪いとは判断できません。
回数だけでなく、便の硬さ、強くいきむ必要があるか、残便感がないか、おなかが張っていないかなども確認しましょう。
排便しにくい状態や腹部症状が続く場合は、医療機関へ相談してください。
便のにおいで悪玉菌が多いか分かりますか?
便のにおいだけで、悪玉菌の割合を判断することはできません。
便のにおいは、食事内容や便が腸内にとどまった時間、体調などによって変わります。
急な変化が続く場合は、便の形や色、腹痛などほかの状態も併せて確認しましょう。
腸内細菌検査を受ければ健康状態が分かりますか?
腸内細菌検査は、採便した時点で検出された菌の種類や割合を知る参考になりますが、検査だけで健康状態や病気を診断することはできません。
検査方法や分析基準もサービスによって異なります。
結果を一つの情報として捉え、気になる症状がある場合は医療機関を受診しましょう。
腸内環境のためにサプリメントは必要ですか?
健康な人が腸内環境を考える場合、サプリメントを必ず利用する必要はありません。
まずは、食事、運動、睡眠、排便習慣などを見直すことが基本です。
利用する場合は、原材料、含まれる成分、一日の摂取目安量、アレルギー表示などを確認してください。
薬を服用している人、治療中の病気がある人、妊娠・授乳中の人は、医師や薬剤師へ相談しましょう。
まとめ|腸内環境は食事と生活習慣を総合的に考えよう

腸内環境とは、腸内にすむ細菌の構成や働き、細菌が作り出す物質、便通などを含めた腸内の状態を表す言葉です。
腸内細菌の集まりは「腸内細菌叢」や「腸内フローラ」と呼ばれます。
その構成は一人ひとり異なり、すべての人に共通する一つの理想的な割合が決まっているわけではありません。
この記事の要点をまとめます。
- 腸内には多種多様な細菌がすんでいる
- 善玉菌・悪玉菌・日和見菌は、働きを理解するための便宜的な分類である
- 腸内フローラと腸内細菌叢は、日常的にはほぼ同じ意味で使われる
- 腸内細菌の構成には、食事、年齢、運動、睡眠、ストレス、薬の使用などが関係する
- 便の回数だけでは、腸内環境の良し悪しを判断できない
- 特定の食品に頼らず、食事全体と生活習慣を見直すことが大切である
腸内環境のために特別な食品を探す前に、穀類、豆類、野菜、果物、きのこ、海藻などを組み合わせ、食物繊維を含む食品を無理なく取り入れましょう。
発酵食品も、食事全体のバランスを考えながら献立の一部として利用することが基本です。
発酵食品の種類や選び方、食物繊維との組み合わせについては、腸活に発酵食品が役立つ理由とは?種類・選び方・食べ方を解説で詳しく紹介しています。
運動、睡眠、休息、排便の習慣なども含め、今の生活で続けやすいことから少しずつ見直していきましょう。
ただし、血便やタールのような黒い便、強い腹痛、原因の分からない体重減少などがある場合は、「腸内環境の乱れ」と自己判断せず、医療機関へ相談してください。
参考情報
