健康診断の結果票で「AST」「ALT」「γ-GTP」という項目を見たことはありませんか?
「肝機能」の欄に並んでいるこの3つ、実はすべて酵素の名前です。
40代・50代になると、この数値に印がつく人が増えてきます。
この記事では、この3つの酵素が何を表しているのか、どのくらいの数値で注意が必要なのか、数値が高いときに何をすればいいのかを、わかりやすく解説します。
3行でわかるこの記事の結論
※この記事は一般的な情報です。健診機関によって基準値が異なるため、ご自身の結果票の判定を優先してください。
健康診断のAST・ALT・γ-GTPは「酵素」の数値
AST・ALT・γ-GTPは、主に肝臓の細胞の中で働いている酵素です。
健康診断では、この酵素が血液中にどれだけ出ているかを測っています。
なぜ血液中の酵素で肝臓の状態がわかるの?
肝臓の細胞を、水の入った風船だと想像してみてください。
風船の中の水が、細胞の中で働く酵素です。風船が無事なら、中の水は外に出ません。
ところが、お酒の飲みすぎや脂肪のたまりすぎで細胞が傷つくと、風船に穴があいたように中の酵素が血液中に漏れ出します。
つまり、血液中の酵素が多いほど、肝臓の細胞が傷んでいる可能性が高いというわけです。

細胞は毎日少しずつ入れ替わっているので、健康な人でも血液中には少しの酵素が含まれています。
「酵素が足りているか」を測るものではない
ここで注意したいのは、この数値は「体の酵素が足りているか」を測るものではないということです。
数値が高いのは「酵素が多くて元気」ではなく、「細胞が傷ついて酵素が漏れ出ている」という意味です。
また、「酵素不足」を調べる検査はありません。酵素不足については、こちらの記事で解説しています。
あわせて読みたい: 中高年の「酵素不足」とは?疲れ・胃もたれ・太りやすさの本当の原因と対処法
AST・ALT・γ-GTPの違いと判定基準
3つはどれも肝臓に関わる酵素ですが、多く含まれる場所や、数値が上がりやすい原因が少しずつ違います。
3つの酵素の違い
| 酵素 | 別の呼び方 | 多く含まれる場所 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| AST | GOT | 肝臓、心臓、筋肉、赤血球 | 肝臓以外の影響も受ける。激しい運動の後に上がることも |
| ALT | GPT | 主に肝臓 | 肝臓の状態をよく反映する |
| γ-GTP | γ-GT | 肝臓や胆管(胆汁の通り道) | 飲酒や一部の薬、胆汁の流れの滞りで上がりやすい |
※結果票によっては「GOT」「GPT」「γ-GT」と書かれていることもありますが、同じものです。
人間ドックの判定基準
日本人間ドック・予防医療学会は、次のような判定区分を定めています。
| 項目(単位 U/L) | A 異常なし | B 軽度異常 | C 要再検査・生活改善 | D 要精密検査・治療 |
|---|---|---|---|---|
| AST(GOT) | 30以下 | 31〜35 | 36〜50 | 51以上 |
| ALT(GPT) | 30以下 | 31〜40 | 41〜50 | 51以上 |
| γ-GTP(γ-GT) | 50以下 | 51〜80 | 81〜100 | 101以上 |
出典:日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」
基準値は健診機関によって少し違うことがあります。ご自身の結果票の判定もあわせて確認してください。
「ALTが30を超えたら受診を」という新しい目安
日本肝臓学会は2023年に「奈良宣言2023」を発表し、健康診断でALTが30を超えていたら、かかりつけ医を受診しましょうと呼びかけています。
ALTはほかの臓器にあまり含まれないため、血液中の値が肝臓の障害をよく反映するからです。
上の表ではALTが31〜40は「B 軽度異常」ですが、肝臓学会の考え方に沿えば、この段階でも一度医師に相談する価値があるといえます。
出典:日本肝臓学会「奈良宣言特設サイト(一般の方向け)」
どの数値が高いかで考えられること
3つのうち、どの数値が高いかによっても、考えられる原因の候補が変わります。
あくまで大まかな目安として参考にしてください。
| 数値のパターン | 考えられることの例 |
|---|---|
| γ-GTPだけが高い | お酒の影響、胆のうや胆管の病気、一部の薬の影響 |
| ASTだけが高い | 激しい運動の後、筋肉や心臓、血液など肝臓以外の影響 |
| ALTも一緒に高い | 肝臓そのものに負担がかかっている(脂肪肝、肝炎など) |
たとえば、健康診断の前日にジムで激しく運動しただけでも、筋肉からASTが出て数値が上がることがあります。
心当たりがある場合は、受診したときに医師に伝えましょう。
ただし、この表だけで原因を決めつけることはできません。実際の診断には、ほかの検査項目やエコー(超音波)検査なども合わせて判断されます。
参考:ぎょうとく内科・内視鏡クリニック「AST高い・ALT高いと何が問題?」
数値が高いときに考えられる主な原因

お酒の飲みすぎ
お酒を分解するのは肝臓の仕事です。飲む量が多い状態が続くと肝臓に脂肪がたまり、γ-GTPを中心に数値が上がります。
お酒が原因の肝臓の病気は「アルコール関連肝疾患」と呼ばれます。
お酒を分解する酵素の働きには生まれつきの個人差があります。詳しくはこちらで解説しています。
あわせて読みたい: 酵素の体内での働きとは?消化・エネルギー作り・分解などを身近な例でやさしく解説
お酒を飲まなくても起こる脂肪肝(MASLD)
お酒をほとんど飲まなくても、肝臓に脂肪がたまることがあります。
食べすぎや運動不足による肥満、糖尿病、脂質異常症などと深く関わっています。
このタイプの脂肪肝は、以前は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれていました。
現在は「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」という名前に変わっています。
出典:日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」(2024年8月)
40代から体重が増えてきた人や、更年期以降におなか周りに脂肪がつきやすくなった女性は、お酒を飲まなくても注意が必要です。
ウイルス性肝炎(B型・C型)
B型やC型の肝炎ウイルスに感染していると、症状がないまま肝臓の炎症が続くことがあります。
治療法は大きく進歩しているので、まだ一度も肝炎ウイルスの検査を受けたことがない人は、この機会に受けておくと安心です。
多くの自治体で、無料または少ない負担で検査できます。
薬や健康食品の影響
薬だけでなく、サプリメントや健康食品が原因で肝臓に負担がかかることもあります。
「体に良さそう」と思って飲んでいるものが、実は数値を上げている可能性もあるのです。
受診するときは、飲んでいるサプリも必ず医師に伝えましょう。
肝臓は「沈黙の臓器」。症状がなくても受診を
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり悪くなるまで症状がほとんど出ません。
「どこも痛くないから大丈夫」と放っておくと、脂肪肝から肝硬変や肝がんに進むこともあります。
健康診断の数値は、症状が出る前に肝臓の異変に気づける貴重な手がかりです。
受診の目安
| こんなとき | 目安 |
|---|---|
| ALTが30を超えている | かかりつけ医に相談(奈良宣言2023) |
| 結果票で「要再検査」「要精密検査」と判定された | 必ず受診する |
| 数値が毎年少しずつ上がっている | 基準内でも一度相談する |
| 白目や肌が黄色い、強いだるさがある | すぐに受診する |
相談先は、かかりつけの内科や消化器内科です。受診するときは、次のものを持っていくと話がスムーズです。
- 今回と過去の健康診断の結果票
- 飲んでいる薬やサプリの名前(お薬手帳や商品のパッケージの写真)
- 普段の飲酒量のメモ
数値が気になる人が今日からできること

医師に相談したうえで、生活の中で取り組めることもあります。
数値を改善する基本は、飲酒量と体重の見直しです。
お酒は「純アルコール量」で考える
厚生労働省のガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、1日あたりの純アルコール量で男性40g以上、女性20g以上としています。
純アルコール量は、「飲む量(ml)× 度数(%)÷ 100 × 0.8」で計算できます。
たとえば、ビールロング缶(500ml、5%)1本で約20gです。つまり女性はロング缶1本で、すでにリスクを高める量に達します。
出典:厚生労働省「健康診断および保健指導におけるアルコール健康障害への早期介入に関するガイドライン」(2024年3月)、「飲酒ガイドライン作成検討会」
まずは飲む量を決め、週に数日はお酒を飲まない日を作りましょう。
体重を少しずつ減らす
脂肪肝の改善には、体重を減らすことが基本です。
ただし、急な減量や極端な食事制限は、かえって肝臓に負担をかけることがあります。
数か月かけて少しずつ減らすことを目指しましょう。
- 甘い飲み物や間食を減らす
- ご飯や麺の大盛りをやめる
- 毎食、たんぱく質と野菜のおかずを添える
歩く・軽い筋トレを続ける
体を動かすことは、体重が変わらなくても肝臓の脂肪を減らす助けになるといわれています。
一駅歩く、階段を使うなど、無理なくできることから始めましょう。
「肝臓にいい」サプリに頼らない
「肝臓にいい」とうたう健康食品もありますが、前の章で触れたように、健康食品が肝臓の負担になることもあります。
自己判断で始めず、まず医師に相談しましょう。
よくある質問
Q1. γ-GTPはお酒をやめれば下がりますか?
お酒が主な原因の場合、禁酒や節酒を続けると数値が下がることが多いといわれています。
ただし、下がり方には個人差があり、お酒以外の原因が隠れていることもあります。医師と相談しながら経過を見ましょう。
Q2. お酒を飲まないのにγ-GTPが高いのはなぜ?
脂肪肝(MASLD)や胆のう・胆管の病気、薬の影響などが考えられます。
お酒を飲まないのに高い場合こそ、原因を確かめるために受診しましょう。
Q3. 健診の前日にお酒を控えれば数値は下がりますか?
前日だけ控えても、普段の飲酒習慣による数値は大きくは変わりません。
健康診断は「普段の自分」を知るためのものなので、数値を良く見せるより、正直な数値で判断することが大切です。なお、前日の激しい運動はASTを上げることがあるので避けましょう。
Q4. 酵素ドリンクや酵素サプリで数値は良くなりますか?
なりません。
健康診断の数値は「肝臓の細胞から漏れ出た酵素の量」であり、酵素を補って変わるものではありません。また、食べた酵素は消化されるため、体の酵素にもなりません。
Q5. 基準値内なら安心していいですか?
基準値内でも、毎年少しずつ数値が上がっている場合は注意が必要です。
今年の結果だけでなく、過去の結果票と並べて変化を見ることをおすすめします。
まとめ|健康診断の「酵素」は肝臓からのメッセージ

健康診断のAST・ALT・γ-GTPは、肝臓の細胞から血液中に漏れ出た酵素の量です。
症状が出にくい肝臓からの、大切なメッセージといえます。
- 数値が高いのは、肝臓の細胞が傷んでいるサイン。「酵素が足りているか」を測るものではない
- ALTが30を超えたら、症状がなくてもかかりつけ医に相談を
- 主な原因は、お酒、脂肪肝、肝炎ウイルス、薬や健康食品
- 改善の基本は、飲酒量と体重の見直し
まずは手元の結果票を出して、ALTの数値が30を超えていないか確認してみましょう。
あわせて読みたい: 酵素とは?40代から知っておきたい基礎知識
参考資料
| 資料 | 裏づける箇所 |
|---|---|
| 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」 | AST・ALT・γ-GTPの判定基準 |
| 日本肝臓学会「奈良宣言特設サイト(一般の方向け)」 | ALTが30を超えたら受診、沈黙の臓器 |
| 日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」 | MASLDなどの名称 |
| 厚生労働省「健康診断および保健指導におけるアルコール健康障害への早期介入に関するガイドライン」 | 生活習慣病のリスクを高める飲酒量 |
| 厚生労働省「飲酒ガイドライン作成検討会」 | 純アルコール量の計算方法 |
| ぎょうとく内科・内視鏡クリニック「AST高い・ALT高いと何が問題?」 | 数値のパターン(補助的な出典。可能なら学会の資料に差し替え) |
